現代社会においては答えが1つではない複雑な課題を、他者と協力しながら解決していく能力が不可欠になります。このような社会を見据え法政大学第二中・高等学校では、全教科にわたる幅広い教養を身に付けつつ、さらに、知識を獲得するにとどまらず、知識を用いて「自ら論理的に思考し、他者に表現することができる力」の育成を目指しています。具体的にどんな授業が行われているのか、今回はある日の中学生の理科の授業を見てみましょう。
Q.今日の理科の授業では、どんなことに取り組んでいますか?
今日は水溶液を鑑定する実験です。中学3年化学分野ではイオン、酸とアルカリについて学習しています。物質名を伏せた6種類の水溶液A~Fを用意します。各実験班(一つの班に3~4名)は、少量の水溶液を1種類ずつ順番に試験管に取り、4つの鑑定項目(①水溶液の色・においなど、②水溶液をリトマス紙にしみこませたときの変化、③水溶液に硝酸銀水溶液を滴下したときの反応、④水溶液にマグネシウムリボンを入れたときの反応)にしたがい、水溶液A~Fの物質名を鑑定します。
この4つの鑑定項目からわかることは何でしょうか? ②のリトマス紙の変化からは、その水溶液が酸性・中性・アルカリ性のいずれであるかがわかります。③の硝酸銀水溶液の反応からは、その水溶液中に塩化物イオンまたは水酸化物イオンのいずれが含まれているか否かがわかります。④のマグネシウムリボンの反応からは、その水溶液が酸性であるか否かがわかります。
実際に用意した水溶液は、アンモニア水・塩化銅水溶液・食塩水・塩酸・硫酸・水酸化ナトリウム水溶液です。これらの水溶液はいずれも、法政二中に入学してから、理科の実験において一度は扱ったことのあるものです。4つの鑑定項目において、それぞれの水溶液ではどのような変化や反応が見られるでしょうか?
Q.理科ではこのような取り組みをもとにしてどのような力を身につけてほしいですか?
一つは、既習事項を未知の対象に応用する力です。目の前の水溶液の物質名は、実際に変化や反応を見てみるまでわかりません。また、ある変化や反応は、複数の水溶液で同じように見られることもあります。このことから、既習事項をもとに、可能性のある物質名をしぼりこんでいく作業が必要になります。
もう一つは、既習事項でないことが出現したときに、なぜそのようになるのかという疑問をもつ力です。たとえば、塩化銅水溶液は、既習事項である溶質(塩化銅)の電離式から想定される液性と、実際に観察される液性は異なります。これを見逃さず、その場では結果的に解明できなかったとしても、どうしてだろうという疑問を持てることが大切であると考えています。
さらにもう一つは、共同する力です。実験班では、3~4名で一つひとつの鑑定作業を進めていきます。わずかな変化も見逃さない観察が得意な人、精密な実験操作が得意な人、実験作業の効率的な方法を見出すのが得意な人、実験結果を正確に記録するのが得意な人など、いろいろな人がいます。みんなで相談・協力し、お互いの得意・不得意を理解しつつ、互いに補い合うことの大切さに気付いてもらいたいと思っています。
いかがでしたか? 法政大学第二中・高等学校ではこのほかにも様々な工夫がこらされた授業が行われています。今後もいろいろな授業について紹介していきたいと思います。
※授業における取組の内容については、年度によって変わることがあります。