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高3選択講座リレー17 ~古典特講~

高等学校
THAT'S 法政二!

 法政二高の高校3年生は、1~2講座の「必修選択講座」を履修します。この必修選択講座は、各教員が専門性をいかして講座を開く大学のゼミのような少人数の授業です。多種多様な講座の中から、生徒が自らの興味・関心や問題意識に応じて講座を選択し、より広く深く学習することができます。
 今回は、国語科の講座として開講されている「古典特講」について紹介します。

Q.「古典特講」はどんなことを勉強する講座ですか?

 江戸時代の前期に大阪で活躍した作家、井原西鶴の散文作品(小説)を読んでいます。この時代の作品は普段の授業ではあまり扱われませんね。

 17世紀から貨幣経済の進展とともに新しいエネルギーを持った新興町人層が成長していきます。しかし後半になるとそうしたダイナミックな展開は影を潜め、大きな資本を蓄えた町人はさらに儲かり、中下層の町人は自身の生活を維持するのが精一杯の状況が生まれてきます。いわゆる「銀が銀を儲くる世」です。お金のある者はどんどん儲かり、ない者は現状を維持するのにやっと。絶えず没落の危機と背中合わせという状況です。こうした生活の中ですっかり人間性を失ってしまうということは誰にとっても他人事ではありません。この状況下で、いったい自分はどのように生きたいと願うのか、またはどのように生きることが我慢できないのか、それは当時の町人たちにとって無関心ではいられない問題です。

 こうした時代に西鶴は矢継ぎ早に作品を出版していきます。その作品は飛躍的な発展を見せたこの時代の出版文化を背景にして、こうした時代に生きる多くの人に迎えられました。

 どこか今の時代と似ているこの時代に書かれた西鶴の作品を通して、今を生きる我々が何を掴むのかを考える講座です。

Q.「古典特講」の特徴的なレポート、取り組みについて教えてください。

 現在の受講者は20名です。基本は作品を一つひとつ読み進めていく形を取ります。短編が多いので二時間で一作品読んでいくペースを目指しています。作品には、人間性を失っていったり自分の非人間性の前に思わず立ち止まったりと、疎外された状況下に生きるさまざまな人間が「笑い」の中で描かれています。それをみんなで考えようという講座です。

 いわゆる「口語訳」や助動詞の意味などの「文法」に時間を割くことはありません。しかし西鶴独特のリズム、文体がありますのでそれに慣れるまでは少々我慢が必要かも知れません。

 試験はせず、評価はレポートで行います。よく考えないでももっともらしいことが口から出る人や、勝手な早合点で結論を出してその「自説」を展開するような「発表上手」な人には向いていません。まして受験用の講座でもありません。

 担当者としては、西鶴作品との対話(じっくりとした思考)を通して、古典も含めた文学作品を読むことが受講者にとって現代を生きる上で不可欠な糧となるきっかけになればと、密かに願っています。